おっさん「ちょっと待て。お前だ、お前。走ってるお前だ」
俺「何ですか?」
おっさん「お前、何で毎日走ってるんだ?もしかして武道か何かやってるのか?」
俺「うーん、今は○○○拳法やってます」
おっさん「こっち来い」
俺「えっ?」
おっさん「いいから来い」
俺「はい」
おっさん「回し蹴りやってみろ」
俺「えっ」と思いながらも「はい」と返事して、素直に回し蹴りをやる。するとおっさん
おっさん「やはり○○○拳法だな。スピードは有るが、それでは人は倒せんぞ。」
おっさん「角度が違うんだ・・・・軸足はもっとこう外側に開く。力をため込むように。その反動で蹴りこむようにする」
おっさん「やってみろ」
俺「はい」
素直に回し蹴りを、言われた通りにしてみる。(やりにくい)(そして遅いし綺麗じゃないと思った)
俺の考えを読み取ったように
おっさん「まっ、そんなもんだな。お前、武道は踊りじゃないんだぞ。わかっとるか?」
俺「はい。あのー、もしかして○○空手ですか?」
おっさん「よくわかったな。そうだ。何で解った?」
俺「いえ、すごく実践的と言うか、パワーがあると言うか」
おっさん「ふむ。まあいい。明日もどうせここを走るんだろう?走るコース変えて、ここの場所をゴールにしろ」
俺「何でですか?」
おっさん「俺が教えてやる。○○空手を」
この人は後から知ったんだが、おっさんぽいけどまだ若かった。新しい道場○○空手の支部を作るらしく、その支部長で、その道場ができるまでの間、生まれた実家に帰ってきて身体がなまらないように一人でトレーニングしているという事だ。それをこの人の母親から教えてもらった。(この母親、俺の知ってるおばちゃんだった)
その日から毎日毎日、教えてもらうようになった(タダで、道場が出来るまで)
先生(おっさんのこと)
「お前はセンスがいい。」「とにかく○○○拳法はやめろ。変な癖がでるといかん。」
俺「でも、○○空手、この辺ないんですよ。道場ないですよね。先生は○○に行ってしまうんでしょ?」
先生「うーん、それが問題だな。お前○○に来い」
俺「いやー、俺、中坊ですよ?」
俺「ところで先生、素手で石割れますか?」
先生「あれか」「できんことはない」
俺「本当ですか?お願いします、見せてください」
先生「うーん、強さとは関係ないぞ」
俺「何を言ってるんですか?超人技でしょ」
すると先生は、自分が橋の下に勝手に持ち込んだトレーニングの道具が置いてあるところに行くと、石を割る時の台にすると思われるような固そうなものと、厚みはあるが平ぺったい石を見つけてきて、その台の上に乗せた。
先生は「キエッー」か「セイヤーッ」か忘れたが、気合とともに石に手刀をぶつける。
割れない。もう一度試みてニ度目くらいに石が見事に割れた。
俺「すっげっー!」
その後、止めろと言われてもなかなか踏ん切りがつかず、拳法は相変わらず続けていた。しかし、とにかく道場に通ったからといって強くはならないとは思っていたので、相変わらず自分でトレーニング方法を考えては実行する事を主体としていた。どこかで「俺も石を割れるかな?」などと、甘い期待を持ち、鍛えては「叩いてみた」りもした。が、割れなかった。割ることに執着はしてなくとも、やはり割れないという事は「まだまだ弱い」と自分を責め、そしてまたトレーニングなどと馬鹿な事を繰り返す日常だった。