アニマに4段階あったように、アニムスにも4段階の分類と発達があるとしたのはユングの妻であるエンマ・ユングでした。一般には女性の無意識にある理想の男性像として存在すると言われています。
下記には一般に言われている4段階の分類と発達をかなり簡潔にまとめました。
第一段階は、「力のアニムス」
この段階は男性の肉体的な力強さ、たくましさとして現れると言われています。
第二段階は、「行為のアニムス」
この段階はまさに「勇気ある行動」を実際に起こすことが出来ること。その性格や行動力に魅力を感じる段階であると言われています。
第三段階は、「言葉のアニムス」
この段階は合理的であること、論理的であることに魅力を感じる段階であると言われています。
しかし、ただ合理的で論理的であることだけではなく、答えをはっきりどちらかに割り切るものに魅力を感じる段階であるとも言われています。
第四段階は、「意味のアニムス」
物事に秘められた意味や気づきなど、深い洞察力を持っています。人生の意義などを教えてくれるアニムスに惹かれる段階だと言われています。
元型は、時代や民族を超えた人類共通の集合無意識に変わらず存在していても、アニマやアニムス、その他の元型のイメージも、実感として当時のヨーロッパの文化に触れその時代に生きた人と、日本の文化に触れそれぞれの時代に生きた人により、多少違いはあると思います。
人類すべてが共通するイメージがあると仮定しても、やはり意識に上る上で文化や民族、家系（遺伝子）や個人の無意識、更には今の意識に至るまでに様々な影響を受けて意識に上ってくるのではないのか？こんな事も頭に入れ、共通のものを探す視点を私たちがとれるならば、ユングの言う集合的無意識や元型も理解しやすくなるのでは？と、私個人としては思います。
ですからそんな視点でアニムスを理解するならば、女性の中に存在する理想の男性像も、現在日本で生きる私たちの視点で捉え直したほうがピンとくるのかな？なんて思いながら続きを書いていきます。前にも言いましたが、あくまで私が「使える考え方かな？」と思うことなので、ユングを学びたい人は色々な方達を学び、あくまで一つの意見だと思ってくださいね。
まず力のアニムス。これは肉体的たくましさや力強さと言われますが、現代の日本の女性で「筋肉が大きく、太く逞しい男性が好き」という方も勿論いるでしょう。または「昔は好きだった」って方もいるとは思います。「アスリート」「細マッチョ」が好き・・こうなると何となくわかる気もします。が、私の考えとしては、力のアニムスは「その時々の力になりうるもの」ではないかと思います。肩書き、権威、容姿や学歴、経済力、家柄、もちろん肉体的身体的な力強さや逞しさを含め、これらはやはりその時々の場所や集団において力になりうるものだと思います。肉体や逞しさだけと捉えるより、その時代や民族や集団にとって「力になりうるもの」と捉えたほうが私はしっくりきます。お付き合いを考えている女性が男性を決める時、やはり最初の段階では容姿や肩書き、経済力など、その女性が無意識のうちに「力となるであろうもの」を重視して決めてしまうのも何となく理解できると思います。
歳をとってきて解ることだとは思いますが、やはり若いうちは何かと外見（肩書）や外に現れるものに目が行きがちですが、自然にその人の中身というか本質に目が向いてきます。
しかし、もし力のアニムスを投影できた男性とお付き合いが出来たとします。お付き合いが進むほど、それはあって当たり前になり、次に求める（次の段階に進む）ものがその彼の行動では？と思います。
例えばエンマ・ユングの分類通りの肉体的逞しさをもった彼を力のアニムスの投影をしたとします。しかし世の中、上には上がいます。例えば強いと思っている逞しい彼があなたと一緒の時、他の男にからまれたとします。その時、あなたを守るために「相手を徹底的にぶちのめす」、逆に「彼がその男に徹底的にぶちのめされた」としたらどうでしょうか？
その時、女性はどちらを「カッコいい」とか「ステキ」とか思いますか？
気持ちが若い人なら解りませんが、多分多くの女性はどちらもそうは思わないですよね？
もちろん、これが常に日々生きるか死ぬかの「戦いの中で生きている」のなら話は別でしょう。きっと生き残る度に、守ってくれる度に「強さや力」に固着するでしょう。
しかし、現代の一般的な日本の社会においてはあまりなさそうですよね？
学歴があり知識があるとても頭が良いと思ってた彼が他の方と口論になり「徹底的に言い負かされた」、逆に「徹底的に言い負かした」これでも同じことです。
また、彼はさほど強さが感じられない人で、頼りなさを時には感じていた彼がいたとします。そんな時からまれた彼は「顔面蒼白、ぶるぶる震えながらも何度も殴られながら、倒れても倒れても彼女を守ろうとした」。この彼を弱い人と思う女性がいますか？「勇気ある行動をとれる人」ってなりませんか？そう言うことです。
でもこんな彼でも絡まれている時、逃げるチャンスがあったにも関わらず、逃げなかったらどうでしょう？すぐそばに大声で助けを求めれば助けてくれる人がいそうにも関わらず、助けを求めずにいた事実があったならどうでしょうか？強い弱いに関わらず、更には勇ましい行動とも言えませんが、逃げるチャンスを見つけたらすかさず彼女の手を取り逃げる決断をしたなら、周りを見渡せば何人もの集団がいてその人達が助けてくれそうなら「助けてください」と恥ずかしげもなく頼んだらどうでしょうか？
合理的であり、論理的かつはっきりした決断とはこのようなことではないでしょうか？
さて、助けてくれそうな人もいない、逃げる隙もない、後はやるか？やられるか？
多くの場合、実はまだそんな段階ではありません（笑）。何故なら周りは見渡したけど相手をよく観察していないからです。観察とは、相手が薬物や酒を摂取しているような奴なのか？意識がはっきりしていて絡んできたのか？筋者なのか？話が通じる相手なのか？格闘技などの経験がありそうか？ただ単にカップルに因縁をつけたかっただけなのか？仲間が近くにいるのか？相手の服装、年齢、体型、骨格、筋肉の付き方、姿勢、言葉づかい、精神状況など、どんな人物かを知ることです。
第四段階は、「意味のアニムス」が彼なら、この観察力を用いて深い洞察力を働かせるでしょう？「見た感じは筋肉の付き方も普通だし目の威圧感もない、場馴れしてない（こういう場面に慣れてない）ようだし、すごく強がっているけど、きっと相手も引けない状態になっていそうだな？」とか、「話は出来る状態みたいだし、金銭目的なら場所的にいって適してないからそれもなさそうだな」など、意味を見出した上に相手の目的も見出し、相手の態度や目的により行動を変える。
その上で必要ならプライドを捨てて土下座するかもしれない。恥を忍んでお金をだすかもしれない。何度も殴られるかもしれない。相手をぶちのめしてしまうかもしれない。合理的で論理的な決断、勇敢な行動、力の行使、必要なものを何でも使う決意。さてこんな事を「彼があなたを何としても守るために内面で決意して行動した」事をあなたが知ったら彼をどう思いますか？更に解決できた後にも「僕もどこか悪かったのかもしれないね。相手の神経に触ることをしたのかもね」と反省しているとしたら。
そういう事だと思います。時間をギュッと縮め、一つのシチュエーションに4段階のアニムスに近いと思われるイメージを登場させてみましたが、どうお感じになったでしょうか？
あなたがこれをお読みになり、どう感じたか？が大切なのです。「からんできた奴が悪いんだからやっちゃえばいいのよ。何で謝るの？男が土下座、情けない」そんな風に思われる人もいるかもしれませんし、「普通は警察呼ぶよね。誰でもスマホ持ってるから、やられても写真撮っとくとかー」なんて方もいるかも知れないですね。「でも怪我したり、させたりして警察とか嫌だしね」なんて人も「きっとその人も女性に振られたか何かで苛立ってたんだから話し合いで解決できないのかな」とか、何となく伝わりましたか？こんな時は無意識にいる男性像、自分の中にいるアニムスに照らし合わせて解決しようと考えるのではないでしょうか？
女性が社会で生き抜くためには様々な問題に直面します。良い悪いは別として、これらのアニムスを取り入れて問題解決出来る女性とそうでない女性とは、やはり色々な事で違いが出てくると思います。