世界を見渡せば、牛を「神」や「神の化身」として崇めている国も少なからずあります。
日本で牛を祭ってある神社で有名なのが「天満宮」や「天神社」ですね。
天満宮は菅原道真を祭神とする神社ですが、総本社である北野天満宮の境内には横たわった牛の像が置かれています。この横たわった牛の像は「撫で牛」と呼ばれ、菅原道真の使いとされています。道真が勤勉だったことから、頭を撫でると頭が良くなると言われているのは有名ですね。
また、仏教から伝わり厄よけの神仏として祀られ、江戸時代以前は人気だった「牛頭天王」もいます。
この「牛頭天王」は、仏教だけでなく神道でも古くから知られており、多くの神社でも祀られていました。
しかし明治の初め、神仏分離令により牛頭天王を祀る神社などでは素戔嗚尊(スサノオノミコト)に祭神の名前を変えました。日本だけでなく、インドのヒンズー教では乳を搾る人々の願いを叶える聖牛として現われたり、中国では医療と農耕の術を人々に教えたという神農(しんのう)の子孫であるとされる蚩尤(しゆう)なども中国神話に登場する牛の頭を持つ神です。この他にも北欧神話に登場する最初の雌牛、「豊かなる、角なし牛」を意味するアウズンブラやギリシャ神話に登場する牛の頭を持つミノタウロスもいます。
牛にちなんだ民話にこんなものもあります。
昔々、神様が言いました。「元日の朝、私のところに来なさい。早く着いたものから12番目のものまでを交代でその年の頭領にしてあげよう。」
それを聞いた動物たちの中で、牛は「私は歩くのが遅いから早く出かけよう」と、前日の夜から他の者達よりも早く出かけました。
牛が神様のお屋敷に行ってみると、まだ誰も来ておらず、一番に到着しました。門も閉まったままです。
牛は喜んで「これで私が一番だ」と思い、門が開くのをしばらく待っていました。そのうち夜も明け、門が開くと何かが牛の背中から落ちました。するとそれは走って門をくぐっていきました。
実は前の晩に出発する牛の行動を知って、ちゃっかり背中に乗っていた動物がいたのです。それがネズミでした。
こうしてネズミが一番となり、牛は惜しくも2番となってしまいました。
その後、到着したのは順番に寅、兔、辰、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪、そして猫でした。猫は1日遅れでやってきて12位までに入れなかったので干支になれませんでした。猫が1日遅れになった理由は、神様の話を聞き洩らしてしまった猫がネズミに訪ねた際、ネズミに1日遅れの日付を教えられたからです。そしてまんまと策略にはまってしまいました。今でもネズミを見ると猫が追いかける理由はここにあるということです。